音響自動書記 Sound Automatic Drawing
01-240822v 青い空間 /Reading guitar DAW-mix wav mp3
[語り文言]
青い空間
廃屋都市渋谷の 複雑に交差した陸橋を
おりようとした 私の視線は
ひとつの小さな顔を しばらく じっと見つめていた。
それは 青く なにやら渦巻いたような
流れの中にうまっており
廃屋都市のくすんだ夜にふさわしい
掃き溜めのごとき地べたすれすれに 存在してるらしい。
階段をおりながら ゆっくりと
その青い空間にある小さな顔に近づいてゆくと
それは 恐ろしげな牙と角をもつ女の顔で
かっと虚空を見据えている様子が見えた。
さらにおりてゆくと やがて
大きさが15センチほどのものであることを知った。
その恐ろしげな顔は 青い空間に溶け込んでいて
青の外周は 単純な輪郭を示し
流動的な性質を持つ大気なのだと知った時
私の眼は その全てを見渡してやろうと
顔ではない広がりをうつろい
やがて その空間の総体は人間の肩から胸にかけての
かたちであることを掌握した。
あ そうだ!
この恐ろしげな顔は般若だったと その思いがよぎったその時
私は ひとりの男が横たわっている
アスファルトの同じ平面に到達していた。
そして そこで深いねむりに入っている人間の呼吸の音を聞いた。
青い空間は ゆっくりとその呼吸の音に合わせて
ささやかな拡張と収縮をくりかえしており
この眼にはっきりとそれが見えた。
おお プラジュニャーパーラミタ
それがあんたの歌なのか?